完璧王子×天然お嬢様~政略結婚のお相手は、喧嘩も強いんです~


その時、紬ちゃんが時計を見た。


「もうすぐ夕食のお時間でございます」

「えっ、もうそんな時間!?」

「はい。ダイニングルームはこの廊下を出て右に二回曲がり、左に一回、その先をまっすぐ進んだ突き当たりの左側でございます」

「えっと、右に二回……左に……」


私は必死に覚える。


「では私は他の準備がございますので」

「えっ」

そう言うと、紬ちゃんはさっと一礼して部屋を出て行ってしまった。

「……あ」

行っちゃった。

せっかく仲良くなれたと思ったのに……

私は少しだけ不安になりながら呟く。

「右に二回曲がって……まっすぐだっけ……?」

大丈夫、きっと行ける。

迷惑をかけるわけにはいかない。

私は小さく気合を入れて、部屋を出たのだった。


――しかし。


「えっと……」


廊下の真ん中で、さっきの説明を思い出す。

右に三回曲がって、そのあとまっすぐ。

「右に三回……」

私はまず右に曲がった。

長い廊下、静かな屋敷。

自分の足音だけが響いている。


「……あれ?」


二回目の角を曲がったところで、私は立ち止まった。

さっきから同じような廊下ばかりだ。


「ここ……さっき通った?」