宗一郎の目には、怒りとも悲しみともつかない感情が滲んでいた。
「……もう遅いんだよ……手遅れだ。俺は全部失った」
その時だった。
「だからって!」
突然、花音の声が響いた。
「自分の息子さんまで巻き込むなんて、絶対にあってはならないことです!」
「花音!」
思わず声を上げてしまった。
まずい……あまり刺激しない方がいい。
だが花音は止まらなかった。
真っ直ぐ宗一郎を見ている。
「大我さんは関係ないじゃないですか!」
「……ほう」
「あなたのせいで、大我さんはずっと苦しんでた……尊敬していた父親に裏切られた時の気持ち、わかりますか!?」
空気が凍る。
宗一郎の目が、ゆっくり花音へ向いた。
「……お嬢さん」
その声は静かだった。
だからこそ怖い。
「黙っていた方が身のためだ」
「嫌です!」
花音が震えながらも叫ぶ。
「大我さんや……酷い目に遭わされた志乃さんに、謝ってください!」
「……お嬢さん、似ているな」
「え……?」
「獅堂の女に」
その瞬間、宗一郎の後ろにいた男が、苛立ったように刃物を抜いた。
「うるせぇ女だな」
「……っ!」
男が一気に花音へ向かって振り上げる。
視界が、真っ白になった。
もう二度と、大事な物を失いたくない。
――花音を守ると、決めたんだ。



