完璧王子×天然お嬢様~政略結婚のお相手は、喧嘩も強いんです~

「……迅!」

低く呼ぶと、すぐ後ろから気配が近づく。

「はい、要様」

「外だ。様子見てくる」

短く言い捨てて、踵を返す。

だが……足を止めた。

……違う。

先に行くべきは……

「……花音」

こんな時に限って、あいつは一人で動く。

志乃と一緒に朝比奈家の護衛と逃げていればいいが……

嫌な予感が、胸の奥に渦巻いた。

人波をかき分けるように、会場の中を進む。

「すみません、通してください」

「何があったんだ?」

混乱した声が飛び交う。

だが、そんなものに構っている余裕はなかった。

どこだ……

視線を走らせるが、見当たらない。

「……っ」

鼓動が、嫌な速さで跳ねる。

嫌な想像が頭をよぎるのを、無理やり押し殺した。

「要様っ」

後ろから、迅が追いつく。

「花音様は?」

「いねぇ」

短く吐き捨てる。

迅の表情が、わずかに引き締まった。

「志乃様とご一緒では?」

「……志乃の部屋にいたが……」

だが、そこにいる保証はない。

むしろ……

「動いてる可能性の方が高い」