完璧王子×天然お嬢様~政略結婚のお相手は、喧嘩も強いんです~

分かっていたはずなのに、こうして直接聞くとやっぱり苦しい。

でも、その奥にある想いははっきりと伝わってくる。

部屋の中に、静かな空気が落ちる。

何か言わなきゃ……そう思った時だった。

遠くの方から、かすかなざわめきが聞こえた。

「……?」

思わず顔を上げる。

志乃さんも同じように、視線を扉の方へ向けていた。

「……今の、何かしら」

最初は、小さな違和感だった。

でも次の瞬間、はっきりとした物音が響く。

ガタン、と何かがぶつかる音。

それに混じる、複数の人の声。

「……外?」

志乃さんが、ゆっくりと立ち上がる。

さっきまでの穏やかな表情は消え、少しだけ険しいものに変わっていた。

「少し、様子を見てくるわ」

「え、でも……!」

止めようとした瞬間。

さらに大きなざわめきが、庭の方から広がった。

ただ事じゃない、そう直感で分かる。

志乃さんが窓の方へと歩み寄り、カーテンの隙間から外を覗き込んだ。

その動きが、ぴたりと止まる。

「……っ」

空気が、一瞬で凍りつく。

「……志乃さん?」

声をかけると、ゆっくりと振り返った。

その表情は、さっきまでとは明らかに違っていた。

「……花音さん」

かすかに震える声。

「下がって」

「え……?」

「……アルティウスの人間がいる」

――その一言で、血の気が引いた。