胸が、ぎゅっとなる。
「でもね」
ゆっくりと顔を上げて、私を見た。
「倒れたのが私でよかったって、そう思ってしまったの」
「え……?」
「あなたじゃなくてよかったって」
穏やかな声だけど、その言葉に思わず息が詰まる。
「花音さんは……優しすぎるもの」
「……そんなこと……」
「いいえ」
静かに、でもはっきりと否定される。
「さっきだって、父の前で大我を庇ったと聞いたわ」
少しだけ、微笑む。
「あんな場で発言するなんて……なかなかできることじゃないもの」
「申し訳ありませんっ、私……出しゃばったことを……」
「いいえ、臆することなく自分の考えをちゃんと伝えられるのはすごいことよ」
「……大我さんは……関係ないって思っていたのでつい……」
「そうね」
志乃さんは、遠くを見るように目を細めた。
「昔は……三人でよく一緒にいたのよ」
「三人……?」
「私と要と、大我」
その名前に、自然と背筋が伸びる。
「子どもの頃は、家同士のことなんて関係なくて……ただ楽しくて。大我も思いやりがあって、すごくいい子でね」
どこか懐かしそうな表情。



