そのまま再び歩き出し、ダンスレッスンの部屋へ向かった。
夕方の光が、静かに差し込んでいる。
「そういえば」
迅さんが、ふと思い出したように言った。
「近々、朝比奈家の創立記念パーティが開催されるそうです」
「……え?」
「志乃様のご体調も回復されたため、予定通り行われるとのことです」
「そうなんですね」
「要様も、出席される予定かと」
ドキッとした。
志乃さんと要さん……二人並んでいた婚約披露パーティの日を思い出す。
私は頭を振った。
要さんは私を選んでくれたんだ、不安になることはないよね……
「花音様も、ご同行される可能性が高いかと思われます」
「……っ」
思わず、息を呑む。
ドレス、社交界。
そして、志乃さん。
「……またダンスがあったり?」
「ええ」
迷いのない答え。
「しかし最近の花音様のダンスレッスンを見ていると、かなりご上達されたようですね。この前のようにお酒を飲んだりしなければきっと大丈夫でしょう」
「アハハ……」
突然痛いところを突く。
「でも……」
迅さんが思い出したように、ふっと笑う。
「あの時のように、酔って抱きつかれるのも悪くありませんでした」
その言葉にボッと顔が熱くなる。
あの時の事、覚えてたんだ……
「迅さん……」
「ハハッ。冗談ですよ」
声を出して笑う迅さんなんて初めて見た……
こんな風に素を見せてくれるようになるなんて。
私は、またあの日のようにはならないと心に誓い、ダンス室のドアを開けた。



