完璧王子×天然お嬢様~政略結婚のお相手は、喧嘩も強いんです~

振り返ると、そこにいたのは迅さんだった。

「迅さん!」

「いい香りがしますね」

いつもの穏やかな笑み。

けれど、その目はどこかよく見ているようで。

「そろそろダンスレッスンのお時間ですので、お迎えに参りました」

「は、はい……!もう終わります!」

慌てて頷く。

「それでは相沢さん、ありがとうございました」

「はいよ、またな」

相沢さんが私の頭をポンポンと撫でた。

軽く頭を下げて、厨房を後にする。

廊下に出ると、少しだけ静けさが戻った。

「……花音様に気軽に触るんですね」

歩きながら、迅さんが静かに口を開く。

「はい?」

「あの方、距離が近すぎませんか?」

……それは要さんにも前に言われたけど……

「気を付けますっ……」

最近迅さんに叱られることが多い気がして、思わず俯いてしまう。

すると横で『はぁ』と、短いため息をつかれた。

「申し訳ありません……花音様は普通に接していらっしゃるだけなのに」

「え?」

「いえ、私も大人げないですね……」

迅さんがふっと笑う。