――数日後の放課後
私は久しぶりに、厨房に立っていた。
今日相沢さんが教えてくれているのは、きのことベーコンのキッシュ。
「手際が良くなってきたな」
「えっ本当ですか!?」
そんな嬉しいことを言われたことなかったから、驚いた。
花嫁修業、最初は不安ばかりだったけど……
「それになんか楽しそうだし」
ふと、相沢さんが小さく笑った。
「えっ」
「前より、ずっと表情が柔らかい」
そう言われて、少しだけ戸惑う。
そんなに分かりやすいんだろうか。
「何か、いいことあった?」
「……っ」
その一言に、心臓が跳ねる。
思い出すのは、要さんに〝好き〟と言われた日のこと。
要さんの言葉と、あの温もり。
「……あの」
ちゃんと伝えたくて、包丁を置き、少しだけ向き直る。
「私……要さんと気持ちが通じ合うことができました」
言葉にするだけで、胸が熱くなる。
一瞬、静寂が落ちた。
「……マジか」
相沢さんは、すごく驚いていた。



