――翌朝
いつものように送迎車に乗り込んだ瞬間。
「おはようございます、花音さん」
先に座っていた要さんが、いつも通りの笑顔でそう言った。
「お、おはようございます……」
まだ少し緊張している自分がいる。
昨日のことが、夢みたいで。
呼び方……〝さん〟付けに戻ってる……って、やっぱり夢だったの!?
でも、ドアが閉まった途端。
「……こっち」
ぽん、と隣を軽く叩かれる。
「え?」
「そこじゃ遠いだろ」
当然のように言われて、戸惑いながら隣に座る。
車がゆっくりと走り出したのと同時に……
「……っ」
手を、取られた。
「か、要さん……!」
「ん?」
何でもないみたいな顔で、指を絡めてくる。
恋人繋ぎ……朝から!?
「ここ、車の中です……!」
小声で抗議する。
「だから?」
さらっと返される。
「運転手さんも……!」
ちらっと前を見ると、何事もないように前を向いている。
「気にしてないだろ」
「気にします……!」
顔が熱くて仕方ない。
でも、手は離してくれない。
「……離そうとすんなよ」
低く、ぼそっと。
「え……?」
「昨日言っただろ」
視線が、まっすぐ向けられる。
「もう遠慮しないって」
「……っ」
心臓が、一気に跳ねる。
「学校だからって関係ない」
さらっと、とんでもないことを言う。



