ふっと、思い出す。
二人でお茶を飲んで笑っている姿。たまに二人だけで旅行に行ったりもしている。
「だから私……そんな夫婦が理想なんです」
そう言った瞬間。
要さんは少し考えるように目を細めて、言った。
「……無理に仲良くする必要はないんじゃないですか」
「え?」
「結婚は形式ですから」
静かな声。
冷たいわけじゃない。
でも、どこか距離がある。
わかってたはずなのに……少し、寂しい。
空気が重くなりそうで、私は慌てて話題を変えた。
「あ、あの!私!」
要さんがこちらを見る。
「茶道だけは得意なんです!」
「茶道?」
「はい!お抹茶なら綺麗に点てられます!ここにも茶室があると聞いて……」
そう言い立ち上がろうとしたら、着物の裾を踏んでしまい……
「あっ」
体がぐらりと前に傾く。
転ぶ!!
次の瞬間、腕を引かれた。
気づいた時には、私は要さんの胸の中にいた。
「っ……」
距離、近い。
近すぎる。
息がかかる距離。
要さんが小さく息を吐く。
そして、ぼぞっと呟いた。
「……どんくせぇ」
「え?」



