完璧王子×天然お嬢様~政略結婚のお相手は、喧嘩も強いんです~


こいつは、黒耀の一員である〝F〟。

迅と同じく、昔うちで動いていた側近の一人だ。

今は中小企業で普通の会社員をやっていて、裏で情報を集めている。

「遅かったですね」

続けて、敬語のまま淡々と言う。

「途中で何かございましたか?」

「ちょっとな」

短く返すと、その隣でもう一人が壁にもたれながら笑った。

「おいK、顔に出てんぞ」

軽い口調だが目は鋭い。

この男は昔アルティウスに会社を潰された家の人間だ。

二年前の抗争の後に知り合って、黒耀を一緒に立ち上げた。

俺はこの男を〝N〟と呼んでいる。

「珍しく余裕なさそうじゃん」

「うるせぇな」

吐き捨てるように言って、ソファに腰を下ろす。

「Jは?一緒じゃねーのかよ」

〝J〟とはここでは迅のこと。

「あいつは……今日は忙しくて来れない」

さっきのことがあったからか、今は顔を見たくない。

「で?例の件、どこまで分かってる」

空気が、一瞬で引き締まる。

「交流会の件ですね」

Fが静かに口を開く。