完璧王子×天然お嬢様~政略結婚のお相手は、喧嘩も強いんです~

父はゆっくりと一歩近づいた。

「今は何かと目立つ時期だ、軽率な行動は控えなさい」

「……承知しております」

「獅堂の名に恥じぬ振る舞いを忘れるな」

一瞬だけ、視線が鋭くなる。

「お前は、この家を背負う人間だ」

「……はい」

親父はこういう時、俺の内面までを見てくるような目つきをする。

「では、行ってまいります」

軽く一礼し、その場を後にする。

背中に刺さる視線が消えるまで、歩調は乱さない。

――門を出た瞬間。

「……はぁ」

小さく息を吐いた。

「相変わらず、面倒くせぇ」

顔から表情が消える。

さっきまでの“獅堂要”は、もういない。

「……クソ」

低く吐き捨て、そのまま歩き出す。

向かう先は一つ。

黒耀の拠点。

人気のないビルの奥。

隠し扉の先にある、薄暗い空間。

扉を開けると、すぐに声が飛んできた。

「お待ちしておりました、K様」

落ち着いた声。

ソファに座っていた男が、軽く頭を下げる。