完璧王子×天然お嬢様~政略結婚のお相手は、喧嘩も強いんです~


「……何考えてんだ、あいつ」

思わず漏れるが、迅は静かに言った。

「花音様は、事情を知るために応じられたのかと」

「だからって、二人で行く必要はねぇだろ」

即座に返す。

抑える気もなかった。

「……はい」

珍しく、迅が否定しない。

そのまま一歩、距離を詰めた。

「僭越ながら……要様も、同様かと」

「……何がだ」

「花音様に、先程ような言葉を言わせたことです」

一瞬、言葉が詰まる。

わずかに視線が鋭くなる。

「無理をされておりました、それは要様も感じておられたはずです」

「……」

言い返せない。

だが、納得もできない。

「私は」

迅が続ける。

「要様に命を救われ、この家に仕えると決めました。その覚悟に、偽りはありません」

一拍置いて。

「ですが――」

ほんのわずかに声が低くなる。

「花音様を思う気持ちは……同じです」

空気が、凍る。

「……は?」

思わず低く返す。

迅は目を逸らさない。

「立場は弁えております」