完璧王子×天然お嬢様~政略結婚のお相手は、喧嘩も強いんです~


沈黙が落ちる。

そんなはずはない。

そう思うのに。

頭の中から、さっきの光景が離れない。

「……そんなんじゃねぇよ」

ようやく絞り出した声は、思ったより低かった。

迅は何も言わない。

ただ静かにこちらを見ている。

その視線が、やけに気に障る。

「……まだ何かあるのか」

苛立ち混じりに言うと、迅がわずかに目を伏せた。

「……一点、ご報告が」

「言え」

間を置かずに返す。

迅は一瞬だけ言葉を選ぶようにしてから、口を開いた。

「本日、花音様は放課後……早乙女様と外出されておりました」

その言葉に、空気がぴたりと止まる。

「……は?」

低く落ちた声。

自分でも驚くくらい、温度がなかった。

「場所は市街地の遊技施設……ゲームセンターです」

「……」

頭の中で言葉を整理する。

早乙女と外出……

ゲームセンターだと?

……なんでだよ。

「事情聴取後、早乙女様の方から誘われたようです」

淡々とした報告。

それが余計に神経を逆撫でする。

「……断らなかったのか」

「はい」

短い肯定、それだけで十分だった。

奥歯を噛み締める。