完璧王子×天然お嬢様~政略結婚のお相手は、喧嘩も強いんです~


着替えを終えてウォークインから出ると、迅が立っていた。

「要様」

静かな声。

「……何だ」

「少し、よろしいでしょうか」

「手短にしろ」

迅は一歩近づく。

「先ほどの花音様の件ですが」

「……」

「志乃様を思っての発言であることは、間違いありません」

「分かってる」

そんなことは分かっている。

それでも……

「ですが」

迅が続ける。

「花音様ご自身の感情を、抑えた上での判断かと」

「……は?」

「本心ではない可能性が高いと考えます」


一瞬、言葉を失う。

「要様が他の女性の側にいることを、快く思っていない……それでも、それを口にされない」

「……」

「理由は……明白かと」

一歩、距離が詰まる。

「要様を優先されたのでしょう」

「……」

「そして」

とどめのように。

「その感情に、要様が気づいておられない」

「……馬鹿言え」

低く返す。

だが、否定しきれない。

「花音様が他の男性と接触することに苛立ちを覚え」

「……」

「ご自身が他の女性と関わることに、花音様が何も言わないことを不満に思う」

静かに言い切る。

「それを一般的には、“独占欲”と呼びます」