こうやってふいに思い出すのは、このネックレスの指輪をいつも身に付けているからだろうか。
「花音さん」
不意に名前を呼ばれ、私ははっとした。
「は、はい!」
「この結婚について、どう思っていますか」
真っ直ぐに聞かれて、少しだけ驚く。
こんなに早く、その話題になるなんて思っていなかった。
私は少し考えてから答えた。
「……正直に言うと、まだ実感はあまりなくて」
要さんは静かに頷く。
「そうですか」
それだけ。
あまりにも落ち着いた反応だった。
だから私は、逆に聞いてしまう。
「要さんは……どう思っていらっしゃるんですか?」
一瞬の沈黙。
そして、淡々とした声。
「決められたことですから」
その言葉は、あまりにもあっさりしていた。
胸の奥が、少しだけきゅっとする。
そうだよね……。
政略結婚なんだから、期待する方がおかしい。
でも……
私は少し笑って言った。
「私の父と母も政略結婚なんです」
要さんの視線がこちらに向く。
「でも、とても仲が良くて」



