完璧王子×天然お嬢様~政略結婚のお相手は、喧嘩も強いんです~



――SIDE Kaname


白い天井。

消毒液の匂い。

静かな機械音。

俺は病院が苦手だ。

母が亡くなった、あの瞬間を思い出すから。


ベッドの上で、志乃は珍しく弱々しい顔をしていた。

「……大丈夫か」

声をかけると、ゆっくりと視線がこちらに向く。

「……ええ。大げさなのよ」

そう言って、笑おうとする。

「顔色、最悪だぞ」

「……ひどい言い方ね」

小さく返す声も、いつもより力がなかった。

「医者の話は聞いた。命に別状はない」

「そうみたいね」

視線が、わずかに揺れる。

「でも……」

そこで言葉が止まる。

「……怖かったか」

ぽつりと聞くと、志乃は少しだけ目を伏せた。

「……ええ」

静かな肯定。

あの志乃が、こんな顔をするなんてな。

「カップを持った瞬間、少し違和感があって……」

ゆっくりと言葉を紡ぐ。

「でも、気のせいだと思ってしまったの」

「……」

「次の瞬間、体が震えだして……」

毛布を握っている手に、少し力が入っていた。

「自分の体じゃないみたいで……本当に、怖かったわ」

その言葉に、胸の奥がわずかに重くなる。

「……悪かった」

「え?」

「守りきれなかった」