完璧王子×天然お嬢様~政略結婚のお相手は、喧嘩も強いんです~


静かな沈黙が落ちる。

私は、膝の上でぎゅっと手を握った。

要さんは、志乃さんのことを考えてる。

当たり前なのに、それがこんなにも苦しいなんて。

「……あの」

気づいたら、口が動いていた。

「やっぱり……」

声が、少しだけ震える。

それでも、無理やり笑顔を作る。

「要さんは昔から志乃さんのこと、よくご存知ですし……」

要さんの視線が、こちらに向く。

逃げたくなるのを堪えて、続ける。

「その……きっと、安心すると思います」

胸が、ぎゅっと痛む。

でも、止められない。

「だから……そばにいてあげてください」

精一杯の、笑顔。

言い切った瞬間、自分でも分かるくらい胸の奥が締めつけられた。

「……」

要さんは、何も言わなかった。

ただ、じっとこちらを見ている。

その視線が、少しだけ怖い。

耐えられなくて、視線を逸らす。

「……それでは、失礼します」

これ以上ここにいたら、きっと無理だ。

立ち上がって、軽く頭を下げる。

「花音様――」

迅さんの声が、かすかに追いかけてくる。

でも、振り返れなかった。

そのまま、部屋を出る。

扉が閉まった瞬間。

「……っ」

こぼれそうになるのを、必死に堪える。

泣いちゃだめ。

今ここで泣いたら、全部崩れちゃう。


廊下を、足早に歩く。

胸の奥が、ぐちゃぐちゃで何が正しいのか、分からない。

ただ――

「……っ」

要さんの隣にいるのは、自分じゃない。

そんな気がして。

苦しくて、たまらなかった。