胸の奥が、ゆっくりと暗く沈んでいくのを感じる。
こんな気持ちになりたくないのに。
「花音様」
迅さんの声に、はっと顔を上げる。
「要様が応接室にてお待ちです」
「……はい」
小さく頷く。
足が、少しだけ重い。
それでも、ゆっくりと応接室へ向かった。
扉の前で一度だけ深呼吸をして、ノックをする。
「……どうぞ」
中から聞こえた声は、いつもと変わらない。
けれど、どこか少しだけ硬かった。
「失礼します」
扉を開けると、要さんがソファに座っていた。
スーツのまま、ネクタイも緩めていない。
その姿を見た瞬間、胸がぎゅっと締めつけられる。
「……おかえりなさいませ」
「……ああ」
短い返事。
視線が、一瞬だけこちらに向けられる。
それだけで、心臓が大きく跳ねた。
そのまま、向かいに座るよう促される。
隣には、いつの間にか迅さんも立っていた。
「……志乃の件だが」
要さんが、静かに口を開く。
その声は、仕事の時のように落ち着いていた。



