運転席の隣に座っていた使用人の方が、静かに振り返る。
「要様ですが、先ほどご帰宅されたとのことです」
「……そうですか」
迅さんが短く答える。
私は思わず、身を乗り出した。
「お体は……大丈夫なんでしょうか……?」
「詳しいご様子までは……」
「……そう、ですか」
ほっとしたような、でも少しだけ寂しいような。
複雑な気持ちになる。
昨日から、何も話せていない。
あのキスのことも。
その後のことも。
そして……
さっきの出来事も。
「……」
窓の外をぼんやりと眺める。
流れていく景色が、やけに遠く感じた。
胸の奥が、落ち着かない。
要さんのことや大我さんの言葉。
そして……
いつもと違った、迅さんの横顔。
私、これからどうしたらいいんだろう。
答えはまだ、どこにも見つからなかった。
屋敷に戻ると、空気がどこか張り詰めていた。
使用人の方々が慌ただしく動いている。
いつもと同じはずなのに、少しだけ違う。
要さんは、もう帰ってきているけど……私がゲーセンにいたことはたぶん、知らない。
知られていないはず。
そう思いながらも、なぜか少しだけ後ろめたくて。
そして同時に、志乃さんのことを考えている要さんの姿が……頭に浮かんでしまう。



