完璧王子×天然お嬢様~政略結婚のお相手は、喧嘩も強いんです~

思わず顔を上げる。

迅さんは窓の外を見たまま、静かに言った。

「花音様が、あの方とああいう距離にいるのを見て……あまり、気分のいいものではありませんでした」

「……はい」

「ですが」

すぐに、いつもの落ち着いた声に戻る。

「私の立場で口出しすることではありませんので」

淡々とした言葉だけど、さっきの一瞬だけ見えた感情が、消えない。

「……迅さん」

名前を呼ぶと、ゆっくりこちらを見た。

その目は、いつもと同じ穏やかな色に戻っている。

「花音様は……」

少しだけ、言葉を選ぶように間を置いて。

「もう少し、ご自身がどう見られているかを自覚なさった方がよろしいかと」

「え……?」

「明確に想いを向けている方が、数名いらっしゃいますので」

「……っ!」

一気に顔が熱くなる。

「そ、そんな……」

「事実です」

きっぱりと言われて、何も言い返せない。

「ですから……軽々しく、誰にでも手を取らせるべきではありません」

「……」

その言葉に、昨日の要さんの言葉が重なる。

――触らせたくない。

私って軽率な振る舞いをしてるのかな。

要さんの婚約者として失格だって思われてしまったら……

その時、前の席から声がした。

「失礼いたします」