「……はい……」
迅さんの手を取ると静かに、しかし強く引き寄せられた。
ぽつりと、大我さんが言う。
「今日は引くけど……」
胸がドキッとした。
「……今すぐじゃなくてもいい」
視線が、真っ直ぐ向けられる。
少しだけ、口元を歪めて。
「俺は引かねぇから、覚えとけ」
その言葉に、迅さんの眉間にしわが寄った。
「……そうですか」
静かに、一歩踏み出す。
「ではこちらも……」
微笑んだまま。
「遠慮はいたしません」
その一言で、空気が完全に変わった。
「……っは。あいつの側近、なかなかやべーな……」
「では、失礼します」
そう言って私の手を引いた。
「花音様、参りましょう」
「はい……」
大我さんの方を見ると、こちらを見たまま動かなくて。
頭が混乱している。
大我さんが……私を好き?
あんなに意地悪なこと沢山言っていたのに?
さっきの言葉が、まだ頭の中で響いている。
――俺は引かねぇから。
胸の奥が、落ち着かないまま。
そのまま、迅さんに手を引かれて歩いていた。
「……迅さん」
呼びかけても、返事はない。
ただ、まっすぐ前を見たまま歩いている。



