完璧王子×天然お嬢様~政略結婚のお相手は、喧嘩も強いんです~

心臓が、痛いくらい鳴る。

「だから」

ほんの少しだけ、手の力が強くなる。

「獅堂じゃなくて、俺の方見ろよ」

「……っ」

言葉が、出ない。

頭の中が真っ白で。

その時、足早に近づいてくる足音が聞こえた。

「花音様」

振り返ると、そこに立っていたのは……

迅さんだった。

いつもの整った笑顔ではなく、焦ったような表情で。

「迅さん!?」

思わず名前を呼ぶ。

その時迅さんが、私の手首を掴んでいる大我さんの腕を強く掴んだ。

「離せ」

低い声だったけど、今まで迅さんの口からは聞いたことの無い声色で。

「は?」

大我さんが、睨み返す。

「今、話してんだけど」

「存じております。とりあえず、離していただけますか」

「断る」

嫌な空気が流れて、今にも喧嘩が始まりそうな……

「……お前」

大我さんが、少しだけ目を細める。

「ただの使用人じゃねぇな」

「え……?」

私は思わず迅さんを見る。

迅さんは、少しだけ視線を逸らした。

「お付の者として、当然の務めです」

淡々と答えていたけど……今まで見た事ない顔をしていて。

「花音様、こちらへ」

手が、差し出される。

その仕草は、いつも通り丁寧だった。

でも……どこか、有無を言わせない圧があった。