完璧王子×天然お嬢様~政略結婚のお相手は、喧嘩も強いんです~

大我さんは、そんな視線を気にする様子もなくこちらに歩いてくる。

でも……何も言わない。

いつもの軽口も、余裕そうな笑みもない。

ただ、静かに自分の席へ向かう。

その背中を見た瞬間、気づいたら立ち上がっていた。

「噂話はやめてくださいっ」

教室が、ぴたりと静まる。

自分でも驚くくらい、はっきりした声だった。

「たい……早乙女さんは、そんなことしません」

視線が、一斉に自分に集まる。

心臓がバクバクしていた。


「口が悪い……から勘違いされてる方もいらっしゃると思いますが……」

一瞬だけ本人を見る。

「……でも」

胸の奥に力を込める。

「人を苦しめるようなことをする人じゃありません」

誰も、何も言わない。

静まり返った教室に、自分の鼓動だけが響いている気がした。

「私は……早乙女さんを信じてます」

それだけ言って、ゆっくり席に座る。

手や足が震えていた。

でも……後悔はなかった。

その時、後ろで椅子が軋む音がした。

「……はは」

小さく、笑う声。