完璧王子×天然お嬢様~政略結婚のお相手は、喧嘩も強いんです~

周りの生徒もそれに気づき、ざわつく。

「志乃!?」

隣にいた大我さんも驚き、志乃さんの手首を掴もうとしたその時。


「触るな」

要さんが大我さんに短く言い放つ。

その一言に、胸が苦しくなるのを感じた。

空気が一瞬で張り詰める。

要さんは志乃さんが飲んだカップを取り上げ、匂いを確かめる。

「……」

無言のまま、すぐに志乃さんの肩を支えた。

「立てるか」

「……ええ……」

「無理すんな」

そのまま、迷いなく立ち上がる。

一瞬だけ、私の方を見た。

「すぐ戻る」

それだけ言い残して。

志乃さんを支えたまま、会場の外へと連れ出していった。

あっという間の出来事だった。

ざわめきが広がる。

「大丈夫かしら……」

「体調不良……?」

周囲の声が、遠くに聞こえる。

私は――

ただ、その背中を見ていた。

胸の奥が、ざわざわと落ち着かない。

心配で、苦しくて。

でも……それだけじゃない。

言葉にできない感情が、胸の中に渦巻いていた。