完璧王子×天然お嬢様~政略結婚のお相手は、喧嘩も強いんです~

要さんは、しばらく何も言わずに指輪を見つめていた。

まるで、触れることをためらうみたいに。

やがて――

「……それ」

ぽつりと、静かに口を開く。

「母の、形見なんだ」

「……え」

思わず、息を呑む。

要さんの視線は、指輪に落ちたまま。

「……獅堂家で代々受け継がれていた婚約指輪で。俺の結婚相手に渡すつもりだった」

「そうだったんですか……」

その言葉の重さに、胸がぎゅっとなる。

「だから……花音さんが持ってて間違いない」

「……っ」

そう言われた瞬間、指輪を見る気持ちがさっきまでと変わった。

ただの預かりものじゃない。

もっとずっと……特別な物。

「なんか……運命みたい」

つい口に出してしまい、ハッとした。

「あっ、す、すいませんっ」

慌てて顔を上げると。

「運命、か……」

要さんが小さく呟いた。

「確かに……俺も不思議な縁を感じていた」

「え……?」

思わず目を見開く。

要さんがこちらに近付き、私の掌にあった指輪をそっと取った。

そして私の左手を取り、迷いなく薬指に指輪を通した。

「……っ」

胸がいっぱいだった。

こんな日が自分にも来るなんて。

「今日からここにつけといて」

「えっ……」

「もう花音さんの物だから」