完璧王子×天然お嬢様~政略結婚のお相手は、喧嘩も強いんです~

「そうだといいのですが……」

「ミートパイ、温かいうちに届けてきてください」

迅さんが切なそうに微笑む。

でもその一言が、背中を押した。

「……はい」

はっきりと頷き、ミートパイを大事に持ち直す。

「……行ってきます」



厨房を出る足取りは、さっきより少しだけ軽かった。

廊下を歩きながら、胸に手を当てる。

さっきまでの重たい気持ちが、少しだけ変わっていた。


怖い……

また拒絶されたらどうしよう。

でも、ちゃんと伝えたい。

コンコン、と扉を叩く。


「……はい」

「花音です……」

一瞬の沈黙。

それから。

「……どうぞ」

静かな声が返ってくる。

扉を開けると、要さんが机に向かっていた。

背筋を伸ばしたまま、振り返らない。

「……どうした?」

その声に、少しだけ胸が痛むけど……

「……あの」

一歩、踏み出す。

「昨日のことで……少し、お話があって……」

要さんの手がぴたりと止まり、静かな空気が流れる。

やがて。

「……俺からも、言おうと思ってた」