完璧王子×天然お嬢様~政略結婚のお相手は、喧嘩も強いんです~


そこにあったのは――

薄く残る、大きな傷跡。

……これって。

見覚えが、あった。

胸が、どくんと大きく鳴る。

花火の光、夜の匂い。

今でもはっきりと覚えている。

あの少年の腕にも同じような傷があった。

息が、うまくできない。

「……どうしました?」

迅さんの声で、はっと我に返る。

「い、いえ……」

慌てて視線を逸らす。

でも、一度見てしまったものは消えなくて。

胸の奥がざわざわと落ち着かない。

……まさか。


簡単な手当てを終えて、私たちは厨房の隅にある椅子に並んで座っていた。

「……すみません、迅さん……」

「いえ、大したことはありません」

そう言って、軽く笑う。

でも……さっき見えた、あの傷。

ずっと、気になっていた。

「あの……」

恐る恐る口を開く。

「さっきの傷……昔のもの、ですよね」

一瞬だけ、空気が止まった気がした。

迅さんの手が、わずかに止まる。

「……ええ」

短い返事。

それ以上は何も言わないから、言いたくないのかもしれない。

「実は……二年前に腕を負傷してる少年に出会ったんです」

「……二年前ですか?」

迅さんが驚いた表情で私を見る。