完璧王子×天然お嬢様~政略結婚のお相手は、喧嘩も強いんです~


低い声と同時に、横から手が伸びた。

ぐっと距離が近づく。

そのまま、迅さんがトレイを支え……

「……っ」

小さく息を詰める音。

「迅さんっ」

慌てて顔を上げる。

トレイは無事に取り出されていたけれど。

「手……!」

迅さんの手が、赤くなっていた。

「大丈夫です」

淡々とした声。

でも明らかに、熱かったはずで。

「大丈夫じゃないです!すぐ冷やさないと……!」

咄嗟にその手を掴んで、流しへ引っ張る。

蛇口をひねって、水を出す。

「早くここに……!」

勢いよく水を当てたけど、手は赤いまま。

どうしようっ!

「すみません……私のせいで……」

思わずそう言うと。

「いえ」

短く返される。

「かすった程度です」

でも、心配で仕方ない。

「ちゃんと冷やさないと……跡になったら……」

そう言いながら、水を当て続ける。

その時だった。

濡れた袖口が、少しだけずれた。

「あ……」

思わず、手が止まる。

視線が、その腕に吸い寄せられた。