「こんな時間にお一人で何を作られてるんですか?」
不意に後ろから声がして、びくっと肩が跳ねた。
「わっ……!」
振り返ると、そこには迅さんが立っていた。
「じ、迅さん……!」
「申し訳ありません、驚かせてしまいましたか」
いつもの笑顔と、落ち着いた声。
ほっとするのに、なぜか少しだけドキドキしてしまう。
「いえ……その……」
少し迷ってから、正直に答える。
「ミートパイを……作っていて」
「ミートパイ?」
「はい……要さんの……お好きなものだと聞いて」
一瞬だけ、迅さんの目がわずかに揺れた気がした。
けれどすぐに、いつもの穏やかな表情に戻る。
「……そうですか」
それ以上は何も言わず、静かにオーブンの方へ視線を向けた。
ちょうどその時。
「……あ、焼けたかも」
タイマーの音が鳴り、慌ててオーブンに近づいた。
ミトンをして扉を開ける。
ふわっと、いい香りが広がった。
「わぁ……」
思わず顔がほころぶ。
ちゃんとできてる……!
嬉しくなって、少し身を乗り出したその瞬間――
「あ……!」
手が滑りそうになる。
「危ない!」



