「要も酷いわ、花音さんがせっかく作ってくれたのに」
そう言って、優しく微笑んだ。
その表情が、あまりにも自然で。
……本当に、いい人なんだなって思ってしまう。
「あの……今日はどうしてこちらにいらしてたんですか?」
「新聞の件でね……ほら、私も記事に載ったでしょ?」
新聞の写真を思い出し、また落ち込んでしまう。
「ごめんなさい、あんな風に書かれてしまって」
〝密会〟のことだよね……
「いえ……」
「変な人たちに絡まれてね」
「やっぱり要さんが殴ったんでしょうか……?」
「ちょっと派手にやりすぎてしまったけど、要が悪いわけじゃないのよ」
それはわかってる。
要さんがワケもなく殴るはずないから。
志乃さんを守ったんだよね……
「要のこと、誤解しないでちょうだいね?」
「はい……」
なんであの時二人でいたのか、聞きたいけど怖くて。
「ケーキ、いただいてもいいかしら?」
「あ、はいっ」
ナイフを入れる手が、少しだけ震えた。
一切れをお皿にのせて、差し出す。
志乃さんはゆっくりと一口食べて……
「……美味しいわ」
迷いのない声だった。
お世辞じゃないって、分かる。
「本当ですか……?」
思わず、聞き返してしまう。
「ええ。ちゃんと丁寧に作られてる味がする」
「……ありがとうございます」
小さくそう言うと、志乃さんはふっと視線を和らげた。



