「……どうしました?」
要さんが、眉を寄せる。
困ったような表情をされて、少し傷ついた。
「あの……これ……」
蓋を開けてケーキを差し出す。
手が少し震えていることに、自分でも気づいていた。
「最近お忙しそうだったので……甘いものでも、と思って……」
要さんがそれを見る。
一瞬だけ、表情が緩んだ……気がした。
「花音さんが作ったんですか?」
「はいっ……相沢さんに教えていただいて、一緒に……」
その言葉を聞いた途端、空気が変わった。
「……相沢と?」
「え?あ、はい……」
何か、間違えた……?
「……そうですか」
そしてふいっと背を向ける。
「あのっ……」
追いかけようとした瞬間、ぽつりと要さんが言った。
「すみませんが……今は結構です」
「……え」
思考が、止まる。
「要」
志乃さんが、少しだけ眉をひそめる。
「せっかく花音さんが作ってくれたのよ」
「……今はいい」
それだけ言って。
要さんは、視線も合わせずに歩き出してしまった。
「要さん……」
呼び止めることもできず、立ち尽くす。
手の中のケーキが、やけに重く感じた。



