――数日後
屋敷の空気は、どこか張り詰めていた。
新聞の記事の影響は、思っていたよりも大きくて。
要さんは昼間はいつも通り振る舞っているけれど……
夜になると、お父様やお祖父様と遅くまで話し込んでいる様子だった。
「……お疲れ、ですよね」
廊下の向こうで、応接間の扉が閉まる音を聞きながら小さく呟く。
あんなに忙しいのに。
あんなに大変そうなのに。
それでも、私には何も言わない。
いつも通りでいるなんて無理。
……何か私にできることはないだろうか。
考えて、ふと思いつく。
疲れている時は、甘いものがいいって聞いたことがある。
「よし……!」
小さく気合を入れて、私は厨房へ向かった。
厨房の扉を開けると、何人かのシェフが昼食の後片付けをしていた。
「あれ?花音様?」
相沢さんが私に気付いて近寄る。
「あの……お忙しいところすみませんが、ケーキの作り方を教えて頂けませんか!?」
「ケーキ?なんで?」
相沢さんが少し驚いた顔をする。
「はい……!要さん、最近お忙しそうなので甘いものでもと……」
「なるほど」
少しだけ優しく目を細めてくれる。
「わかった。じゃ少し待ってて」
「お願いします!」



