「連日お騒がせして申し訳ありません」
要さんが、周囲に向かって言う。
その瞬間、空気がぴんと張り詰める。
「今回の記事についてですが、事実とは異なる内容が含まれております」
一切迷いのない口調。
落ち着いた声が、静かに響く。
「ですが、ご心配には及びません」
堂々としていて、完璧で。
全く動揺もない。
なんだか……遠いな。
「また、朝比奈家のご令嬢とはそのような関係ではありません」
その一言に、周囲がざわつく。
「皆様には、憶測で騒がないようお願い致します」
ぴたり、と空気が静まる。
誰も、何も言えなくなる。
すごい……。
やっぱり、要さんはすごい人だ。
そう思うのに。
胸の奥は、モヤモヤしたままだった。
要さんは記事の件でなのか、先生に呼ばれ職員室に行ってしまった。
一人教室に向かう途中、背後から声が聞こえる。
「でも……九条さんも素敵だけど……あの写真を見てしまうと朝比奈様の方がお似合いじゃないかしら」
「もともとあちらが許嫁だったんじゃ……?」
足が、止まりそうになる。
聞こえないふりをして、前を向く。
……分かってる。
そんなの、分かってるよ。
それでも……要さんの側にいたい。
そう思ってしまう自分がいた。



