峰山さんは微かに口元を緩め、頷いた。
「こちらこそ。緊張されるのも無理はありませんね」
その一言で、余計に緊張するんですが……。
その後、父と母も別の車に乗り、私は獅堂様と一緒の車に乗った。
体が触れているわけではないのに、獅堂様の隣に座るということが初めてでドキドキする。
車内は静かで、シートの柔らかさすら現実味がない。
チラッと横を見ると、獅堂様はまっすぐに前を見ていた。
一度もこちらを見ない。
何を考えているんだろう……獅堂様はこの結婚をどう思っているのか。
綺麗な横顔につい見入ってしまう。
申し分ない家柄に、この美貌。
誰もがこの結婚を羨むだろう。
でも――
私には不安しかなくて。
……本当に、始まるんだ。
花嫁修業。
政略結婚。
そして、獅堂家での生活。
窓の外を流れる景色を見つめながら、私はそっと息を吐いた。



