翌朝、目が覚めた瞬間から、胸の奥がざわついていた。
昨日のことが、頭から離れない。
要さんの言葉、冷たい声。
それなのに、離してくれなかった手の温もり……
「花音様、おはようございます」
紬ちゃんの声で、現実に引き戻される。
「おはよう……」
ぼんやりと返事をしながら、制服に袖を通す。
その時だった。
「……本日の新聞ですが」
紬ちゃんが、少し言いづらそうに口を開いた。
「え……?」
差し出された新聞に、何気なく視線を落とす。
次の瞬間、言葉を失った。
『獅堂家御曹司、婚約直後に不穏な動き
朝比奈令嬢と密会か――来賓者への暴行疑惑も』
「……え」
手が、震える。
あの出来事……?
「要さんが対処したんじゃなかったの……?」
「他の記者にも見られていたようで……誇張された内容かと思われますが……」
紬ちゃんが静かに説明する。
でも、そんなことより。
視界に入った一文が、頭から離れない。
――朝比奈志乃と密会
「……密会って……」
小さく呟く。
違う、よね……?
『要が助けてくれただけ』
あの時志乃さんが言ってくれた言葉や表情を思い出す。
……嘘をついているようには見えなかった。
でも二人でいたのは事実で。
あの距離感、ただの幼なじみなの……?
「……花音様?」
「ううん……大丈夫」
無理やり笑う。
大丈夫なわけないのに。



