「でさ、気になることあるんだけど」
「なんですか……?」
「朝比奈志乃、知ってるよな」
「……っ」
その名を聞いてドキッとした。
「有名人だしな。今回のパーティーの写真も見た」
やっぱり……
「獅堂はあっちと婚約すると思ってたわ」
その一言で、胸の奥が傷んだ。
「……そう、ですよね」
思わずそう返すと、一歩近づいてきた。
「なんだ、傷ついてんの?」
「い、いえ……」
否定したはずなのに、声が弱い。
「昨日のダンスもさぁ、途中で転んだんだって?」
「……っ」
逃げたくなる。
「行った奴から聞いたわ、獅堂家が選んだ嫁にしてはイマイチだって」
淡々とした言葉が、刺さる。
「……すみません」
気づけばそう言っていた。
「俺に謝られても」
「……」
俯いたまま、言葉がこぼれる。
「志乃さんみたいに……なりたいって思うんですけど……」
なぜこの人にこんなことを。
でも……止まらない。
「要さんの隣に立つなら、ああいう方じゃないとって……でも、全然できなくて……」
しっかりしようと思ってても声が震える。



