完璧王子×天然お嬢様~政略結婚のお相手は、喧嘩も強いんです~

私は昨夜の会話のこともあり、内心そわそわしていた。

要さんは机の上で手を組んだまま、動かない。

でも、その目だけが静かに早乙女さんを捉えていた。

二人の距離が、あと一歩で触れそうになる。

そして早乙女さんが、口を開いた。


「やっと会えたなぁ……」


教室がざわつく。

知り合い……?

要さんは、ゆっくりと顔を上げた。

「……どなたでしょうか?」

私からしたら、わざとらしい返しに見えた。

早乙女さんが、にやっと笑う。

「ひでぇな」

少しだけ顔を近づける。

「忘れたのかよ、2年前のこと」

その声は、小さくて。

近くにいる人にしか聞こえないくらい。

2年前……?

――その瞬間。

要さんの目が、わずかに細くなる。

一瞬で空気が変わったのが、私にはわかった。


「……ああ、思い出しました」


目だけが笑っていない。

この二人、知り合いなんだろうけど、きっと普通じゃない。

早乙女さんがくすっと笑う。


「相変わらず、いい顔すんな」


そして、ちらっと周囲を見る。

ざわつく生徒たちに、先生も少し困惑している。

「……ま、今はいいか」

そう言って、くるっと背を向けた。

「席、どこっすか?」

軽い口調に戻り、担任に聞く。

「あ、ああ……知り合いなら獅堂くんの近くにしようと思ってましたがね」

「あー……こいつ以外で。どうせなら女子がいいな」

こんな口調で話す人間、この名門校では初めてじゃないだろうか、そのくらい破天荒な人間だ。