――あの夜の男の子とは、全然違う。
花火の下で出会った彼は、もっと背が低くて。
影に溶け込むみたいで。
そっと胸もとのネックレスを触った。
あの時彼が落とした指輪を、ネックレスのチェーンに通していつも持ち歩いていた。
いつか現れるかもしれないから。
こんなに度々思い出してしまうということは……
私にとってあれが初恋だったんだろうか。
ひとめぼれだったのかもしれない。
でも……
それも私には叶わぬ恋だ。
ぼんやりとそんなことを考えていると、
「九条さん?」
不意に、名前を呼ばれる。
「……聞いていますか?」
少しだけ首を傾げた獅堂様が、困ったようにこちらを見ていた。
「す、すみません!」
慌てて背筋を伸ばすと、獅堂様は小さく笑った。
その笑顔はどこまでも優しくて、穏やかで。
――完璧な王子様。
この時の私はまだ知らなかった。
この人の敬語の裏に、
こんなにも別の顔が隠れているなんて。



