泣いた跡が残る頬。
こんな顔をするほど、無理をしていたのか。
婚約披露のために必死なのは分かっている。
……誰に言われたわけでもないのに。
俺のジャケットを掴んだまま眠る花音を見て、小さく呟いた。
「そんなに頑張るな……」
花音の呼吸は静かで、規則正しい。
俺はソファの背にもたれ、小さく息を吐いた。
しばらくこのままでいいか。
どうせ、外は面倒な挨拶ばかりだ。
花音の手はまだ俺のジャケットを掴んでいる。
離そうとしたが、少し力を入れただけで眉を寄せた。
……仕方ない。
俺はそのままにしておいた。
気づけば部屋は静かで、パーティの音も遠くに聞こえる程度だった。
いつの間にか俺も目を閉じていた――
*
*
「……要さん」
小さな声で呼ばれ、目を開ける。
すると、眠っていたはずの花音が目を覚ましていた。
体を起こしてこちらを見ている。
「花音さん……起きたのか」
そう言うと、花音は少しだけ恥ずかしそうに俯いた。
「……すみません……私……」
「気にしなくていい」
俺が小さく呟いた、その時だった。
コンコン、と扉が叩かれる。
「要様」
高野の声だった。
「そろそろ会場へお戻りください。ご挨拶の時間が近づいております」
俺は小さく息を吐いた。
……もうそんな時間か。
「わかった」
立ち上がろうとした時、ぐっと引っ張られた。



