完璧王子×天然お嬢様~政略結婚のお相手は、喧嘩も強いんです~


泣いた跡が残る頬。

こんな顔をするほど、無理をしていたのか。

婚約披露のために必死なのは分かっている。

……誰に言われたわけでもないのに。

俺のジャケットを掴んだまま眠る花音を見て、小さく呟いた。

「そんなに頑張るな……」

花音の呼吸は静かで、規則正しい。

俺はソファの背にもたれ、小さく息を吐いた。

しばらくこのままでいいか。

どうせ、外は面倒な挨拶ばかりだ。

花音の手はまだ俺のジャケットを掴んでいる。

離そうとしたが、少し力を入れただけで眉を寄せた。

……仕方ない。

俺はそのままにしておいた。

気づけば部屋は静かで、パーティの音も遠くに聞こえる程度だった。

いつの間にか俺も目を閉じていた――




「……要さん」

小さな声で呼ばれ、目を開ける。

すると、眠っていたはずの花音が目を覚ましていた。

体を起こしてこちらを見ている。

「花音さん……起きたのか」

そう言うと、花音は少しだけ恥ずかしそうに俯いた。

「……すみません……私……」

「気にしなくていい」

俺が小さく呟いた、その時だった。

コンコン、と扉が叩かれる。

「要様」

高野の声だった。

「そろそろ会場へお戻りください。ご挨拶の時間が近づいております」

俺は小さく息を吐いた。

……もうそんな時間か。

「わかった」

立ち上がろうとした時、ぐっと引っ張られた。