「あのっ……大丈夫です。お気遣いありがとうございます」
そう答えると、獅堂様は安心したように微笑んだ。
「それならよかった。無理はなさらないでくださいね。九条さんは、学園の誇りなんですから」
さらっと、とんでもないことを言う。
学園の誇りって何!?
重いし、目立つし、恥ずかしいっ……。
しかし、獅堂様の声音はあまりにも自然で、嫌味も下心も感じられない。
むしろ、誰が見ても“完璧な気遣い”。
それが、逆に火をつけた。
「今の……完全に特別扱いじゃないですか?」
「獅堂様、あんな顔もするなんて……」
「もしかして、付き合ってらっしゃる!?」
噂は一気に燃え広がる。
私が気づいたときには、クラス中の視線がこちらに集中していた。
注目されるのには慣れている。
けれど、こんな風に言われるのは初めてで、どう反応したら良いのかわからない。
内心で頭を抱える私とは対照的に、獅堂様は周囲の空気を察すると、穏やかに一歩引いた。
「皆さん、誤解なさらないでください。九条さんとは、同じクラスの友人として、ですよ」
そう言って、柔らかく微笑む。
「体調を気遣うのは、当然でしょう?」
その一言が、また完璧すぎた。
否定しているはずなのに、
むしろ「できた男感」だけが増していく。
フォローが上手すぎる……!



