完璧王子×天然お嬢様~政略結婚のお相手は、喧嘩も強いんです~



――夜空に花火が咲いた。


二年前の夏祭りの夜のことだった。

勉強の息抜きにと、お父様が一日だけ外出を許してくれた。

お付の人も一緒だったけれど、嬉しくて舞い上がっていて。

そのせいで私は、人混みの中であっさりとはぐれてしまった。


「……どうしよう」


辺りを見回してもお付の人の姿はなく、人が多いせいかスマホも繋がらない。

浴衣の裾を握りしめたまま、私は見知らぬ路地へと迷い込んでいた。


その時、遠くから怒鳴り声が聞こえた。

ガラの悪そうな数人が、勢いよく叫びながらこちらに向かってくる。


「あのガキどこ行ったぁ!?」

「まだ近くにいるはずだ!探せ!」


――な、なに!?

驚いて固まっていると、突然腕を引かれた。

気付いた時には誰かに抱きしめられていて。

はぁはぁと荒い息が耳元で聞こえる。

――変態!?

「い、いやっ……」

叫ぼうとした瞬間、

「ごめん、少し黙って」

と、少し掠れた声が聞こえた。

「えっ……」

体を離そうと思ったけど、相手の力が強くて動かない。

「もう少しこのままで……」

本当だったら私は叫んで助けを呼んでいたかもしれない。

でもその人の言うとおりにしたのは……

その人も手が震えていたから。

私と同じくらい、怖いのかもしれない。

ドクドクと、早い鼓動が伝わってくる。