100回目の恋カレー

「てか、高三もあっという間じゃね?」

「だね」

返事に温度なく答えたのは、涼真はサッカーの強豪チームがある男子校を志望していて、私は地元の高校への進学を目指している。

一緒の高校には行けない。

「早いよな、色々と…。公園で靴飛ばししたり虫取りしてたの懐かしいわ」

「確かにね……」

彼の視線を辿れば小さい頃よく遊んだ公園が見え、思い出はすぐに蘇る。
あの頃は良かった。涼真と一緒にいるのが純粋に楽しくて、余計な気持ちは何もなかったから。

「……ずっと小さい頃のままが良かったな」


恋だと知らなければ気付かなければ、こんなに心に吐き出せない靄を抱えることもなかったから。

「ん? やっぱどした?」

「ただの……受験逃避」

「ふぅん……ならいいけどさ」

私たちは並んで緩やかな坂を登っていく。この先のコンビニを右に曲がれば学校に到着だ。

あと五分で今日の朝のルーティンも終わり。

私は晴れた空を眺めながら、少しだけ気まずくなった空気を変えるための、どうでもいい会話を探す。

「おっ!」

「え?」


彼の声に顔を挙げれば視線はコンビニの看板を向けられていた。

「へ〜、いま『唐揚げさん』増量中だって。ヤバくね?」

「好きだね、唐揚げ」

「てか香恋のおばさんの唐揚げ絶品だよなぁ」

いつも通りの彼の様子に安堵しつつ、私はハッとする。

家を出る前に母から言われた言葉を思い出したからだ。