100回目の恋カレー

「いやいい」

「……そだよね、女の子……との電話、私の前じゃしにくいよね」

「そんなんじゃねーよ」

失敗した。涼真は面倒くさそうにスウェットのズボンにスマホをねじ込む。私は瞳に涙の膜が張りそうで、慌ててカレー皿に視線を移すと、黙々と食べていく。

「ごちそうさま」

正面から聞こえた声に体がビクンと跳ねる。見れば涼真の恋カレーは綺麗になくなっていた。

「……うん」

一瞬だけ涼真と視線を合わせたが、彼はさっと立ち上がるとカレー皿を流し台へと置き水を流した。

私も急いでカレーを胃に流し込むとカレー皿を流し台に置いた。

「あとで洗うから置いといて」

「うん。今日もカレー美味かった。いつもありがとな」

いつもの恋カレー。
いつもの涼真のお礼の言葉。
いつもの涼真の笑った顔。

それなのに私の瞳からはついに涙が転がった。

「……え? ……香恋?」

「……見ないで……なんでも、ないから」
 
涼真の前で泣くつもりなんて、さらさらなかったのに一度転がった涙は引っ込めたくても引っ込まない。 

「ひっく……ぐす……」

「ちょ……、なんで泣くんだよ」

涼真が慌ててティッシュ箱を持ってくると私に手渡した。

「香恋、泣くなって」

「だって……」

やっぱり恋カレーのおまじないないなんて嘘だった。

わかってたはずなのに。強制的に終わりを告げた恋は胸の真ん中が痛くてたまらない。

「なぁ……香恋こっち向いて」