100回目の恋カレー

制服に身を包んだ私のこと飯川香恋(いいかわかれん)は、今日も《《アイツ》》と玄関先で待ち合わせだ。

ガチャリと扉の開く音と共に「ふぁあ〜」と眠そうなあくびが聞こえてきて、私は振り返った。

「おはよ、涼真《りょうま》」

「はよー」

柔らかい黒髪をくしゃっと握りながら、幼なじみの加納涼真《かのうりょうま》が再度大きく口を開けると目尻に涙を浮かべた。


「徹夜したの?」

と言うのも今日は期末テストの最終日だからだ。

「ううん。やろうと思ったけど、気づいたら机で爆睡」 

「え……っ、寝る前見たら電気点いてたから、てっきり」

私と涼真の家は隣同士で互いの部屋はそれぞれ二階にあり、窓の位置もほぼ同じなのだ。
昨夜、一時頃、ベッドに入る前に涼真の部屋を見れば電気がついていた為、てっきり徹夜してると思っていた。

「あーあ、香恋のせいで期末テスト、俺、欠点じゃん」

背の高い涼真が肩で私の体を軽く突く。たったそれだけのことなのに心臓がとくんと鳴る。

「わ、私のせいじゃないし!」

照れ隠しでいつもように言葉尻が少しキツくなる。

「冗談。そんなすぐ怒んなって」

「怒ってないし」 

「えー、目釣り上がってるけど?」

「もう……っ」

わざと口を尖らせてみれば彼が目だけで笑う。

せっかく幼馴染の特権をフル活用して、二人きりの登校なのに、学校までの十五分はいつだって不毛に過ぎていく。

手を伸ばせばすぐ届く距離にいるのに、私たちの心の距離は年を重ねるにつれて、どんどん離れていってる気がして仕方ない。