ひかるくんには何でも見えている




 週が明けて、月曜日。



「美沙ちゃん、お昼一緒に……あれ」

「天野さんなら、チャイムが鳴った瞬間にどこか行っちゃったわよ」


 七海ちゃんと白雪ちゃんの声が後ろから聞こえた。

 わたしは母さんに握ってもらったおにぎりを片手に、早足で廊下を歩いていく。


 昼休みが始まってごった返す中、昇降口で靴を履き替え、小走りになる。



 床の崩れる事故が2度起こったことで、すみやかな建て直しが決まった体育倉庫の前を通り過ぎる。

 そういえば、2度の事故については、ひかるくんと司郎さんが上手く先生たちに説明したらしい。
 なんて言ったのかは知らないけど、白雪ちゃんも納得はしてくれたようだ。


 体育館の裏へまわると、前と同じように、木にもたれかかって待ってる男子がいた。



「早いね、ひかるくん」

「今日は授業が早く終わったからさ。魔が学校の近くで出たんなら、少しでも早く見つけないと」


 ひかるくんの真剣な目が、ほんの少しわたしを見下ろす。

 その声からは、使命感みたいなものを感じる。


「うん。わたしが、わずかな魔の声でも全部聞き取るから」



 昨日の日曜日に、ひかるくんが学校の近くで魔の姿を見たということで、また昼休みの見回りを2人でやることになったのだ。


 前と同様、校内をくまなく周りながら、わたしは聴いて、ひかるくんは見て、魔を探す。



 ……嬉しい。


 魔が出るのは良くないことだけど、こうして一緒にひかるくんと行動する理由ができたんだ。



 ひかるくんと共に、七海ちゃんや白雪ちゃんや、学校や街のみんなを守る。


 それが、わたしの役目。




「ありがとう。でも、美沙ちゃんも無理しすぎないで」


 と、目の前のひかるくんが突然、わたしの背中に右手を回した。


 ひかるくんが力を入れると、わたしとひかるくんとの距離がぐっと近づく。



「オレは美沙ちゃんも、守らなきゃいけないんだ」



 ささやくような声。
 赤くなるひかるくんの顔。
 鼓動音が大きくなるわたしの心臓。


 ひかるくん、言いたいことはわかるけど、どうしてそんなにカッコよく……!



 というか、今までわたしのこと、ちゃん付けだったっけ……!




「うん、わかってる! わたしも、ひかるくんのこと守るから!」


 頭の疑問を大声で吹き飛ばす。


 すると、ひかるくんはパッと右手をわたしから離した。



「おう……一緒に、魔と新たな守り手探し、頑張ろう」



 そう言ってほほえむひかるくんは、最高に頼りがいがありそうな顔と、声をしていた。



「頑張ろう!」



 わたしとひかるくんの守り合い、頼り合いは、これからも続いていくんだ。