ね?キスしよ!

「いや、別にいいですよ」

男性は断り、ドアを閉めようとする。それをフランソワーズは手と足で制した。閉まろうとしていたドアがゆっくりと開いていく。男性は真っ赤な顔で抵抗していた。

「う、うぅ……!馬鹿力!」

「好きな人を落とすためなら私たちはなんだってするものよ!」

ドアが完全に開いた。男性は真っ赤な顔でゼェハァと荒い息を吐き、フランソワーズを睨み付ける。フランソワーズはニッと歯を見せて笑った。その際に見えた犬歯は、人のものよりも大きく尖っていた。

フランソワーズ・ロランはヴァンパイアである。



このアパートの部屋の主、キク・タカハシはシャワーを浴びに浴室へ向かった。彼は日本から留学しており、ヴァンパイアであるフランソワーズに付き纏われている。

キッチンに立ったフランソワーズは、慣れた手つきで料理をする。卵を茹で、野菜を綺麗に盛り付け、パンを焼く。

「フフッ。料理を覚えておいてよかったわ」

ヴァンパイアは血液しか口にしない。しかし、フランソワーズはキクに作ってあげたいと料理を勉強してきた。