――ねえ、悪食のケモノって知ってる?
なんでも食べちゃうんだって。
♢
学校帰りに不思議な生き物を拾って三日経った。
それは丸くて毛むくじゃらで、ふわふわの尻尾がついている。顔は毛に埋もれて見えないけれど、時々呼吸音がするのでどこかにはあるようだ。
両手のひらに乗る程度の大きさなので、こっそり部屋で子猫を飼っている気分。犬猫と違って鳴かないし、動きも緩慢で大人しい。何よりふわふわの尻尾が魅力的で、勉強漬けの日々の癒しにぴったりだった。
この生き物は小魚を食べる。
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学校帰りに不思議な生き物を拾って十日経った。
少し大きくなった毛むくじゃらは、随分と早く動けるようになったようだ。手足はないのでフローリングを這うように移動する。時々コロコロと転がっている。
尻尾は相変わらずふわふわで、肩に乗せると首に巻きついてくるのが可愛らしかった。
成長に伴って食べる量も増えた。どうやら生魚がお好みらしい。頭とヒレは綺麗に残して平らげる。
♢
学校帰りに不思議な生き物を拾って半年経った。
私は今とても困っている。毛むくじゃらが私と同じくらいの大きさに育ってしまったからだ。ベッドの下に隠しているが、家族にバレるのも時間の問題。
食べるものも魚では満足できなくなったらしく、夜中にどこかで鳥を仕留めて来るようになった。
そして最近、近所で噂が流れ始めた。熊のような生き物が夜中に町を徘徊していると。その為パトロールが行われているのだと。
「ねえ、キミ。なんでも食べられるの?」
当然反応は無い。
「もしかして人間も食べられる?」
その時私は初めてこの生き物の瞳を見た。黒くて丸い目が大きく見開かれている。じっと私を見つめるその生き物は、信頼を示すようにゆっくりと瞬きをした。
「じゃあ、食べて欲しい人がいるんだけど。二股野郎の元彼と、私から元彼を奪ったクソ女。家の近くまで案内するからさ、夜中のうちにやっちゃってよ」
翌日、地域のニュースで二人が行方不明になったことを知った。
二人の家の近くには大型動物の痕跡が残っていたそうだ。
きっと頭と爪は綺麗に残っていたんだろうなとぼんやり考える。
夜明けとともに戻った毛むくじゃらを撫でていると、徐にヒビ割れた人間の爪をぺっと吐き出した。
〈了〉


