嫌いな人を連れていってもらうおまじない

 ねぇ、「嫌いな人を連れていってもらうおまじない」って、知ってる?
 わかんない? そっか。じゃあ、教えてあげる。

 誰にも見られないように、深夜二時に嫌いな人の写真を鏡に押しつけて、「この子をそちらに連れていってください」って、三回唱えるだけ。あ、鏡に自分の顔が写らないようにね。間違えて連れてかれちゃうから。コンパクトでも使えば、簡単でしょ?
 でも、注意して。使う写真は、必ずその人がピンで写っていなきゃいけない。他の人が写っていたら、巻きこまれちゃうし。

 ん? 連れていかれた人はどうなるかって? もちろん、鏡の中だよ。噂によると、現実と同じような世界が広がっているんだって。で、その中で普通に生活しているその人のそっくりさんと、入れ替わっちゃうんだ。だから、嫌いな人が消えても、誰にもバレない。完全犯罪ってやつみたいだね。
 え? それじゃ、意味ないんじゃないかって? 大丈夫だよ。見た目はその人でも、性格は違うらしいから。急に人が変わったように見えて、終わり。最近、雰囲気変わった? とか、イメチェンした? とか、そんなもん。新しい友だちができたとでも思えばいいよ。
 どう、思い出した? きみ、知ってたでしょ? このおまじないのこと。まあ、どっちでもいいけど。

 でも、入れ替わった本人たちはかわいそうだよね。周りは知った顔なのに、全然知らない人間なんだからさ。家族も家族じゃない。友だちも知らない子ばっかり。どうして自分がこんな目に、って。寂しくて悲しくて……。ふふ、せめて友だちの一人くらい呼びたくなっても、仕方ないよね?
 あれ、どうしたの? なんだか顔が青いよ? そんなに怖がらないで。大丈夫、大丈夫。死ぬわけじゃないから。

「向こうのわたしと仲よくね?」