俺が好きなのは、お前だ。~男友達の積年の片想い相手はわたしでした~

 そういうわけで、丈一郎はきちんとからだを拭き、パジャマに着替えてから、洗面所を出た。右手にある冷蔵庫を見たときに、誘惑に駆られたが、ぐっとこらえた。

 居間の時計は十七時ちょうどを指している。ご飯、どうすっかな……。例年、綾乃の誕生日にはステーキを焼くか二人で外食をしていたが。あの調子だと無理だろう。帰ってくるときも綾乃がかなり疲れていた様子なので買い物もなにもできなかった。美味しい出前にでもするか。訊いてみよう。

 足音立てぬよう寝室に歩を踏み入れれば、綾乃は、優香をラッコ抱きしたままで、寝ていた。眠っているようだった。綾乃の言う通り、貝のように我が子を抱っこしているポーズは、確かにラッコにしか見えない。

 積み上がったままの段ボールが目に入ったが――どうせ、手を出したら、また余計なことをと叱られるに決まっている。

 それに、丈一郎は神でも仏でもないのだ。理不尽な物言いに腹を立てることだってある。

 思い返すと、なんだか胃がむかむかしてきて、とりあえずテレビを点けた。そして、大好きなFoo FightersのライブDVDと、缶ビールを取りに行った。